〜　プロローグ　冒険家になった理由　〜

　昔、昔のそのまた昔。 白い泉がまだ輝く泉と呼ばれていた頃、 白い泉の伝説が始まる前のお話です。

　ウキキ森に１匹のお猿さんが住んでいました。

このお猿さん、どうしようもない怠け者で、 どこかへ移動するのも

誰か自分の目の前を通って行く おサルさんの背中に勝手におぶさって、移動する位怠け者でした。

　怠け者のおサルさんの目の前を誰かが通って行くと、

いきなりそのおサルさんの背中に飛びつき、 「おい。あっちにいけ。」 と命令する始末。

「え〜。やだよ。僕はこっちに行くんだ。」 「行かないと、くすぐるぞ〜」 　こちょこちょこちょ〜。

　くすぐられた方はたまりません。 だって笑い死にするかと思う位、くすぐられてしまうから、

結局この怠け者のおサルさんの言う事を聞く羽目になるのです。

「ぎゃははははははは〜。ヒーヒー、止めてくれェ〜〜」

　怠け者のおサルさんは、しっかりとした身体つきで、

標準のおサルさんより重いので、飛びつかれた方は

たいてい地面にうつ伏せになって倒れてしまいます。

で、結局、おぶさられた方は、 手足をバタバタさせて、許しを請うのでした

「よし。俺をおぶさってあっちのバナナが沢山生えている

　木のところまで連れて行け。」 「は〜〜〜〜い。（Ｔ_Ｔ）」

　こうして、おぶさらられた方は、重い１匹の怠け者のおサルを おぶって、ヒーヒー言いながら移動する事になるのでした。

　なので、皆からは「ものぐさ太郎」等とあだ名をつけられていました。

　当然誰もみんな、ものぐさ太郎の前を通るのも嫌がり、 やがて誰も彼の前を通らなくなりました。

　誰もものぐさ太郎の前を通らなくなって約一週間過ぎました。

その場に生えていたバナナも全て食べ尽くし、 更に１日経過しました。

「う〜ん。腹減ったなぁ。誰か通らないかなぁ?

　そしたらおぶさってバナナが生えている木の所まで連れて行ってもらうのに。」

　等と不届きな事を言いながら、 尻尾で枝にぶら下がり、ぶらんぶらんしていた時の事です。

約１週間と１日ぶりに、他所の森から観光でやって来た おサルさんが２匹通りました。

　しめた！こいつらにおぶさって、別の所へ連れていてもらおう。 となまぐさ太郎は思いました。

　おぶさる瞬間を狙っていたなまぐさ太郎でしたが、

他所の森からきたおサル２匹の会話が、風に乗って聞こえてきたので、

ついつい聞き入ってしまいました。

「おい知ってるか?」 「何を?」 「例の話さ。ほら、輝く泉の話。」

　１匹の豪快なおサルさんが、立ち止まって 痩せたおサルさんの顔を真剣なまなざしで見ました。

「あぁ。あの話か。冒険家が我も我もと、探している泉の話だな。」

「そう。それだ。なぁ。行ってみないか。」 「え〜。やだよ。あんな話デマに決まってるさ。」

　痩せたおサルさんは、渋い顔をして、 豪快なおサルさんの顔を見返しました。

「そうかなぁ。でも、輝く泉に生えている輝く木の下には 　すごい財宝が埋まってるって話だぜ。

　一攫千金、探し当てれば、俺達大金持ちじゃねえか。」

「だけど、そう言って探しに行った奴ら、誰１人帰ってこないじゃないか。」

「そりゃ、まぁ。そうだけれど・・・。」 　

豪快なおサルさんは、少し顔を曇らせました。 そんな様子を見ていた痩せたおさるさんは、あきれた顔で言いました。

「やめとけ、やめとけ。他の奴から聞いた話じゃ、 　輝く泉には、すごい化け物がいて、皆食べられてしまったから

　誰一人帰ってこないって話だぜ。」 「え？マジ？？そんな話初めて聞いた。

　命は惜しいし、やっぱり止めておこう。」 「そうそう。そんな泉ありゃしないさ。 　

いく奴は、本当に命知らずの大馬鹿野郎さ。」

　痩せたおサルさんは、両手を天に向けてオーバーなしぐさをすると スタスタと歩いていってしまいました。

「おい。待てよ。」 　痩せたおサルさんの後を追いかけて、

豪快なおサルさんも 走り去ってしまいました。

　枝に尻尾でぶら下がったままブランブランして腕を組み合わせて しばらくなにやら考え込んでいた、

なまぐさ太郎でしたが、 やがて木から飛び降りると１週間と１日ぶりに、地面に両足をつけました。

「輝く泉?すごい財宝? 　探す価値はあるぜ〜〜〜。馬鹿な奴らだなァ。

　探しに行こうとしないなんて。 　財宝を探すなんて、男のマロン・・・じゃなかった、

　ロマンじゃねぇか〜！いい話を聞いたな。

　一攫千金、大金持ち〜!そしたら、一生寝て遊んで、食べて暮らせるぜ！

　よし！俺はたった今から「冒険家」だ！」

　こうしてなまぐさ太郎は、冒険家としての第一歩を踏み始めたのでした。

　

原作『Ｌｕｎａ＆ｓｏｌ』秋さん

画像制作σ(・・*)アタシ